磯のサヨリ釣りについて~鴨川の漁師さんのお話

ひょんなことで、知り合った地元の漁師さんのお話

優しい漁師さんとの出会い

2021年3月下旬に鴨川の磯へサヨリを釣りに行ったとき、地元の漁師さんと知り合いになりました。
その時に漁師さんから聞かせていただいたお話です。


サヨリの磯釣り

行きたい釣り場の近くに車をとめる場所がなかったため、かなり遠くの駐車スペースから荷物を持ってトボトボと歩いていた。

そこへ近くに住んでいる漁師さんがたまたま車で通りかかり、僕の前で停車して

「もしかして、あっちにある駐車場から歩いてきたの?」と訊いてくる。

「あ、そうです。ハイ」と僕が応えると

「あんなに遠くから荷物持って歩くのは大変でしょう。今度来るときはウチに車をとめなよ。ウチ、そこだから。遠慮しなくていいよ」と言う。

本当に優しそうな笑顔の漁師さん。
その漁師さんと僕が路上で話した場所から数メートルのところが、漁師さんの家だった。

「本当にいいんだよ。普段は別の海の漁師さんが釣りに来た時に停めていくよ」とのこと。

僕は「いや、そんな・・・遊びで釣りに来ているのに、漁師さんのお家の敷地に停めさせていただくのは申し訳ないですよ。ありがとうございます」と、そのお気持ちに対してお礼を伝え、その時はそれで話は終わった。

しかし、その日の釣りの帰りにその漁師さんの家の前を通ったら、ちょうど漁師さんが網を干していて、またお会いしたのです。

すると、「釣れた? 何を狙っていたの?」と訊いてくる。

「いや、サヨリだったんですが、ダメでしたね」と言うと、

「今日の潮は少し難しかったみたいだね。先に来ていた人たちもさっき帰ったよ。また来るときがあったら、ホントにウチに車を停めなよ」

と言って下さる。

今日初めて会ったばかりの通りすがりの僕に、そのように言ってくれる優しくて心の広い漁師さんに感動を覚えつつ、再度お礼を言ってその場をあとにした。

漁師さんたち流のサヨリ釣り

後日、再びそのエリアに釣りに行った時のこと。

前回、漁師さんとお会いしたところから少し離れた場所だったのだけど、やはり駐車場から荷物を持って目的の磯へ歩いていたとき、

「あれ、あなた。また釣りに来たの? ウチに停めればいいのにさ。」
と車を停車して話しかけてくる人がいる。

前回このエリアに来たときにお会いした漁師さんだった。

「自分の車が漁師さんの仕事の邪魔になってしまいそうで、つい遠慮してしまう」という内容の話をしたら、ニコニコしながら、
「気にしなくていいのにさ。ところで、今日もサヨリかい?」と訊いてくる。

すると・・・その漁師さんが話し始めた。

「前にも言ったけど、ウチにいつも車を停めて釣りに来る人も漁師なんだよ。漁に出ない休みの日に釣りに来るんだ。今の季節のサヨリ釣りはみんなにとっても休日の楽しみなんだよ。でも、来てもそこで釣りをしないで別の場所に移動しちゃう日もあるよ。海を見れば分かるんだよ。だから、朝明るくなるころに3か所くらい見て回って、ここなら釣れると思った場所でやるのさ」

漁師さんたちはカンヌキサイズ(40センチ前後)のサヨリを100匹釣れば、「今日は釣れたよ」と言い、50匹くらいなら「まあまあだな」と言い、20~30匹の釣果だと「今日はちっとも食わねえ日だったよ」と言うらしい。そのセリフで釣果が分かるとのこと。

それも午前中だけでの釣果とのことで、聞いてびっくり。

僕が唖然としていると、「なかには50年近く漁師をやっている人もいるからさ」とのこと。

聞けば・・・漁師さんたちは、何日も前からの天気、その日の潮の流れる方向と速さ、潮の状態や色、当日の風の向きと強さなどを考慮して、「ここなら釣れる。この磯の、この釣り座であれば型のいいサヨリが数釣れる」と判断して竿を出すとのこと。

漁師さんたちにとっては、どんなに広い磯であっても本当にサヨリがたくさん釣れる釣り座は、せいぜい2~3人しか入れないくらい限定されているものだという。

しかも、わずか10メートル釣り座が違うだけで、倍以上の釣果の開きが出てしまうという。

また、サヨリを寄せるためのコマセと、寄ったサヨリを引き留めるためのコマセの濃度をそれぞれ微妙に変えるとのこと。

つまり、漁師さんたちは釣るべくして釣っている、ということ。

たまたま釣れることがある僕とは大違い。
だから、僕の場合は釣果にムラがあるし、ボウズの日もあるのだろう。
数も大きく伸びないのだろう。

数十年、毎日海を見て、海とともに生きてきた人たちに僕など足元にも及ばないけど、とても印象に残る話だった。

そして、最後にいくつかのアドバイスをもらった。

潮は真潮なのか逆潮なのか、常に見ているか。

潮の色をいつも目を凝らして見ているか。

北風が吹けば沿岸の水温が上がり、南風が吹けば水温が下がるのが外房の特徴だけど、一昨日、昨日、今日は風の向きと強さはどうか。

磯にぶつかった潮がサラシになって、どのくらいの距離を払い出ているか。
その勢いに変化はないか。

水温が高い冬はサヨリがなかなか岸近くに寄ってこない。
そういう時はどういう釣り場を選べばいいのか。

海の中には、エサ取りがどこにいて、本命がどこにいるかイメージできているか。

・・・などなど。

いただいたアドバイスのうちの一つに、「できるだけ自分で決めた磯に数多く何度も通うことだよ」とのお話がありました。

同じ磯に何度も通い、意識して海の変化を見ていくことで、日によって変わる海の違いが少しずつ分かるようになるはずだということ。

そして、そういう場所をいくつか持っているのが理想だとのこと。

僕にとっては、そういう場所を見つけることから始めなくちゃいけない。

磯でのサヨリ釣り

シーズン終盤になってしまった房総のサヨリ。

できる限り釣り場へ足を運んで、ほんの少しでも手応えをつかめたらいいけど、今シーズンは難しいだろう。

きっと、その漁師さんとはまたお会いすることがあると思う。

その時に「漁師さんのアドバイスのおかげで、少しずつ海が分かるようになり、以前よりもたくさん釣れるようになりました。ありがとうございます」と、心からのお礼を言える日が来ればいいなと思う。

 

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